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【曖昧なハザードマップ?】日本で絶対に住んではいけない地名を漫画にしてみた(マンガで分かる)@アシタノワダイ

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【曖昧なハザードマップ?】日本で絶対に住んではいけない地名を漫画にしてみた(マンガで分かる)@アシタノワダイ

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自治体が移住を勧めるエリアが、災害危険区域のこともある

害リスクのある場所は「土砂災害警戒区域」「浸水想定区域」などとして、公的なハザードマップに載っている。しかし、そうした災害危険エリアに自治体が“居住誘導”している例がある。不動産コンサルタントの長嶋修氏は、「私たちは土地のリスクを調べ、それに応じた対策を行う必要がある。企業や行政に頼っていては危ない」という——。

不十分なハザード情報の開示

不思議なことに、浸水可能性のある地域は、そうでないところと比べて、地価(不動産価格)に大きな違いが出ていません。その理由は、「多くの人がハザードマップなどの災害関連情報に無頓着だから」です。

2019年秋に発生した台風15・19号や、18年に起きた北海道胆振東部地震などの被災地の多くの住民が、「ハザードマップを見たことがない」と回答していました。筆者が19年11月にツイッター上で行ったアンケート(2万3700人参加)では、不動産取引の際にハザードマップの説明を「受けた」と回答した人は10.8パーセント、「受けていない」は43.0パーセント、「よくわからない。忘れた」は46.1パーセントでした。

宅地建物取引業法において、現状、不動産の売買・賃貸時に浸水想定区域などについて説明する義務はありません。情報開示の姿勢は取引現場によってまちまちです。浸水リスクが不動産価格に反映したり、金融機関の担保評価に影響を与えていることはありません。

相次ぐ災害被害を受け、全国知事会は19年7月、不動産取引の際にハザードマップを提示するなど、浸水リスクの説明を義務付けるよう国に提言する決議を行いました。政府は不動産業界団体にハザードマップの説明をせよと通知を出すだけの、「お願い」レベルにとどまっていたからです。

日本の不動産市場の防災意識は発展途上

筆者が国交省に確認したところ、義務化をしない理由は「すべての自治体がハザードマップを公開しているわけではないから」でした。これは低いレベルに全体を合わせる典型的な悪平等主義です。

また業界には「ハザードマップの説明を義務化したら、資産価値の下がる地域が出てしまう」と懸念する声もあります。要は「臭いものにはフタをしろ」というところでしょうか。

こうした中、国土交通省は2020年1月、ようやく重い腰を上げ、不動産売買・賃貸時にハザードマップを提示し、リスクを具体的に説明することを義務付ける方針を公表しました(導入時期は未定)。

浸水リスクと同じく、「活断層の所在」や「地盤」「土地高低差」「液状化の可能性」「建物の耐震性能」なども物件価格に反映されていません。「自治体の防災意識」や「コミュニティの成熟度」も同様です。

不動産広告にもこうした項目は入っていませんし、売買契約書や重要事項説明書にも記載はありません。私たちは日本の不動産市場はこの程度の成熟度で、発展途上の段階であることを、知っておく必要があります。

ハザードマップに限らず、不動産取引履歴をはじめ各種不動産情報は、国、都道府県、市区町村、法務局、上下水道局などに分散しており、個別物件の情報を幅広くきめ細かく調べるのが困難という事情もあります。

自治体が危険地域に居住誘導

わが国はこれから本格的な人口減少・少子化・高齢化社会に突入します。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、現在約1億2600万人の人口は5年後の2025年に1億2254万人、10年後の2030年には1億1912万人、2040年に1億1091万人と急激に減少、2053年には1億人を割り込みます。人口70万人程度の大都市が、毎年1つずつ消滅していくペースです。

人口が減ると自治体の主要財源である住民税が減り、人口密度が下がると、上下水道のインフラ修繕やゴミ収集、北国では除雪などの行政サービスの効率が極端に落ち、税金のムダ使いが増えます。その分、税金を上げれば解決はできますが、事実上不可能でしょう。

また、空き家が一定以上増加すると地域は荒廃し、犯罪の温床となるなど、街の価値を著しく毀損きそんします。ひいては不動産の資産性を失わせることにつながり、それは自治体の主要財源である固定資産税収入の低下を招きます。

これまでの自治体経営は、人口増加を基調として、右肩上がりの経済成長の中で策定した総合計画に基づいていました。しかし、これからは人口と税収減を前提に、多様で高度化する住民ニーズに応えられる自治体経営を行っていかなければなりません。

人口・世帯数減少は「大都市の郊外」が高リスク

行政がすべての公的サービスを提供するには限界があります。これまで以上に「選択と集中」の政策と、最適な財政運営により自治体経営力を高めつつ、持続可能なまちづくりを目指していく必要があります。

そのため、街を「人が集まって住むエリア」(居住誘導区域)と「そうでないエリア」に思い切って分類し、行政の効率や暮らしやすさを維持する「立地適正化計画」を、全国1741自治体のうち477の自治体が策定(19年7月現在)するようになっています。

人口・世帯数減少や自治体運営に対する危機感は、田舎のほうが強いと思いますが、今後リスクが浮上するのは大都市の郊外です。都市の中心部から30〜40キロ圏内、ドア・ツー・ドアで1〜1.5時間かかる、「ベッドタウン」と呼ばれる地域です。団塊の世代を中心とする人たちが一斉に住宅を求めて移り住んだ郊外は、新たに若年層の流入がなければ、人口高齢化が加速します。

立地適正化政策で地価を上げる試みもある

こうしたベッドタウンを抱える自治体の多くは、事態の深刻さを理解しています。例えば、埼玉県ではさいたま市、川越市、志木市、戸田市、春日部市など、千葉県では松戸市、柏市、流山市、神奈川県では横須賀市、相模原市、藤沢市などが、立地適正化計画に乗り出しています。

人口増が続いている東京23区で、この計画に着手しているところはありませんが、安心できません。現在は人口増が続く世田谷区のような自治体であっても、いつかは人口・世帯減の局面がやってきます。世田谷区は全国最多の約5万戸の空き家を抱えており、いずれ立地適正化計画を運用しなければならなくなるでしょう。

各地の取り組みの中で面白いのは、埼玉県の毛呂山町です。同町の立地適正化計画は「20年後に公示地価を10パーセント以上上昇させる」と謳っています。人口は20年で17.9パーセント減少しますが、立地適正化政策によって人口密度を保ち、同時に投資を呼び込むことによって地価上昇につなげる狙いです。こうした宣言は欧米の自治体では当たり前のように行われていますが、日本では初の試みです。

「居住誘導区域」に災害可能性のある地域が多数含まれている

一方で、こうした取り組みの中に、大きな問題が含まれている例があります。「人口密度を維持ないしは増加させ、生活サービスやコミュニティが持続的に確保できるよう居住を誘導する」という名目の「居住誘導区域」の中に、災害可能性のある地域が多数含まれているのです。

国土交通省が作成した立地適正化計画の運用指針は、「リスクのある地域は原則として含めない」となっています。しかし、「リスクのある地域を居住誘導区域に含める場合には、災害リスクや警戒避難体制の整備等の防災対策等を総合的に勘案し、十分に安全性を検証することが不可欠であり、これらの検討・検証結果を踏まえ立地適正化計画に各種の防災対策を記載することが望ましい」といった文言もあり、自治体によって対応はまちまちなのです。

このため「土砂災害警戒区域」「浸水想定区域」などに自治体が“居住誘導”している例があります。

しかし、こうした状況も変わることでしょう。万一被害が起きれば、自治体は責任を問われます。

ハザードマップを考慮した保険料率も始まった

長嶋修、さくら事務所『災害に強い住宅選び』(日経プレミアシリーズ)
長嶋修、さくら事務所『災害に強い住宅選び』(日経プレミアシリーズ)

また災害に対応するにはコストがかかります。いずれ土砂災害の可能性のある区域や、浸水可能性のある区域は、よほどの対応策が施されない限り、居住誘導区域から外れる可能性が高いでしょう。また浸水可能性のない地域では金融機関による住宅ローンの担保評価が100パーセントになる一方、浸水リスクのある地域では50パーセントになるというような違いも現れそうです。要は浸水リスクの低い不動産には融資が行われて資産性が維持されやすい一方、リスクのある不動産には融資が行われにくくなり、資産性の維持は難しくなるというわけです。

楽天損害保険は2020年から、住宅火災や水害、風災に備える火災保険で、国内損保で初めて、水害リスクに応じた保険料率の見直しを行うと発表しました。ハザードマップで洪水可能性などを考慮し、高台などにある契約者の保険料は基準より1割近く下げる一方、床上浸水のリスクが高い川沿いや埋め立て地などに住む契約者の保険料は3〜4割高くします。こうした動きは今後広がるでしょう。

私たちは土地のリスクを調べ、それに応じた対策を行う必要があります。今のところは浸水可能性のあるエリアとそうでないエリアの間で、価格差は見られませんが、やがては安全性に応じて天地ほどの差が開いていくことでしょう。

自治体が移住を勧めるエリアが、災害危険区域のこともある 今後はハザード情報が地価に影響 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)