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【削除動画】高額闇バイト特殊詐欺の受け子になるとどうなるのか(マンガで分かる)@アシワダの避難所

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信じるか信じないかはあなた次第

【削除動画】高額闇バイト特殊詐欺の受け子になるとどうなるのか(マンガで分かる)@アシタノワダイ

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ポイント① 検索すればわりと簡単に見つけられる

ポイント② 家族の個人情報まで押さえられる

ポイント③ 受け子の仕事は意外に簡単?

ポイント④ 簡単に辞めさせてくれない

ポイント⑤ 受け子などの下っ端が捕まるのは折込済み

 

 

スマホで「高収入」気軽な入り口

受け子、名前は「金融庁の大野」

「こんにちは、金融庁の大野です。先ほどの電話の件で来ました。今からこの封筒へ封印作業をしますが、用意してもらったキャッシュカードと暗証番号を書いたメモ用紙をお持ちですか」

 ある民家の玄関先。キャッシュカードを封筒に入れさせる緊張の瞬間だ。家人が割り印の印鑑を部屋へ取りにいった隙に、偽のカードが入った封筒とすり替えた―。

 特殊詐欺の「受け子」として1カ月、全国の高齢者宅を回り、昨年秋に福井県内で逮捕された関東の20代の男は“大罪”の手口を昨日のことのように語った。

仕事を辞め無職だった昨年秋、スマートフォンで手軽にアルバイトを探そうと、会員制交流サイト(SNS)のツイッターで「高収入」「高時給」と検索した。「1カ月で50万円」など食指が動かされる高額バイトの書き込みには、必ず「興味のある方はDM(ダイレクトメッセージ)をください」と書かれていた。犯罪とは書いていない。何のバイトか分からないが、車のローンや恋人の手術代などで借金200万円を抱えていたため、迷わずDMを送った。

 返信はすぐに来た。まず指示されたのは無料通信アプリ「テレグラム」のダウンロード。テレグラムは一定時間が過ぎるとやりとりの履歴が消去され証拠が残らない。メッセージや通話などのやりとりは全てテレグラムに切り替わった。「本部A」「本部C」「上原」「しょうた」…。4、5人の男から代わる代わる連絡があり、言われるがままに名前や家族構成、住所、実家の住所、運転免許証の写真、顔写真を送った。過去の職歴や犯罪歴も尋ねられた。そして、アルバイトの開始までに封筒を10枚ほど準備するよう言われた。

■ ■ ■

 数日後、「本部」と名乗る指示役とのやりとり用の電話を受け取るため東京都内のある駅へ向かった。コインロッカーの鍵を暗証番号で解除すると、中に入っていたのはスマートフォン。コンビニに行き、コピー機のインターネットプリントで、「本部」の指示通り番号を入力した。印刷されたのは本名とは異なる「金融庁 大野輝也」と書かれた偽の身分証。送ってあった自分の顔写真が印刷されていた。「大野」と呼ばれるようになった。

 「少しおかしい」と思ったが、指示に従い名札として首掛けストラップに入れた。

× × ×

 電話や電子メールを用いて高齢者らを信じ込ませ、金をだまし取る「特殊詐欺」。2019年上半期の被害総額は全国で約146億円(福井県内14件で約9200万円)に上る。昨年福井県警に逮捕され、今年10月に懲役3年6月が確定した「受け子」の告白を通し、詐欺グループの実態に迫る。

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「カチコミ」と脅され、抜けられず金融庁職員装い詐欺、受け子の実態

金融庁職員を装うため、受け子の20代の男が本部から指定された服装は白色ワイシャツ、ノーネクタイにスラックス姿。昨秋、コンビニのトイレで着替え、千葉県内の高齢女性宅を訪問した。これが初めての犯行だった。

 両耳にはワイヤレスホン。指示役と電話をつないだままのスマートフォンが、ズボンのポケットに入っている。20代くらいの男の声で聞こえてくる“台本”の通り、せりふを女性に話した。「あ、そうですか」。女性はキャッシュカード2枚をすんなり封筒に入れてくれた。

 「意外と簡単にだませるんだな…」

男が女性宅を訪れる直前、詐欺グループ内で電話をかける役割を担う「かけ子」が警察官を装い「あなたのキャッシュカードが偽造され、口座から現金が引き落とされている」「今から職員が行くので、キャッシュカードを準備してほしい。職員が用意した封筒に入れ、3日間保管するように」などと言葉巧みに女性をだましていた。

 “お膳立て”が整うと、無料通信アプリ「テレグラム」を通して訪問すべき住所が届き、すぐさま出向くよう指示された。

 「こんにちは、金融庁の大野です。○○署(地元の警察署)の○○刑事の件で来ました。これからキャッシュカードの封印作業をしますが、カードと暗証番号を書いたメモ用紙をお持ちですか? 割り印をもらいたいんで、はんこはありますか?」

 直前に電話で復唱させられたせりふ。思ったよりすらすらと言えた。

 ■ ■ ■

 初の犯行はわずか2、3分間。緊張し、心拍数が上がった。女性宅を出ると、手に入れたカード2枚を持ち、指示された現金自動預払機(ATM)へ向かった。1枚で引き出せる上限は1日50万円。2日間で200万円を下ろすことができた。「報酬は引き出した額の8%」。2日間の報酬は16万円の計算だ。

 ただ、既にこのバイトが「犯罪行為」だとは分かっていた。その後も毎回、周囲に警察官がいないか細心の注意を払ったが、「捕まるんじゃないか」という大きな不安や罪悪感にさいなまされた。

 「辞めたい」。こう電話で伝えた。しかし、指示役から「1カ月は辞められない。勝手に辞めたら実家や自宅にカチコミ(殴り込み)に行く」と脅された。「現金を持ち逃げした奴を拉致したことがある」とも言われた。

 抜けようにも既に抜け出せなくなっていた。

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トイレ個室越しに現金、手口徹底詐欺グループ男、全国行脚し2千万円

受け子の20代の男が、封筒をすり替えて盗んだキャッシュカードで現金自動預払機(ATM)から現金を引き出すと、必ず向かったのは公園の公衆トイレ。「回収役」に現金を渡すためだった。

トイレに入ると、必ず個室が閉まっている。「コンコンコン」。男が3回ノックし、中から「コンコンコン」と3回返ってきたら、個室のドアの上から手渡すのがルール。札束を茶封筒に、キャッシュカードを菓子箱に入れ、最後にこの二つをビニール袋に入れて渡す。男も相手も無言を貫いた。

 詐欺グループ内では、メンバーの素性がばれないよう徹底される。メンバーの顔は一度も見たことがなかった。男女すら分からない。

 ■ ■ ■

 トイレで現金を受け渡す一方、週1回、交通費として現金が手渡された。男はビジネスホテルを転々としながら生活した。「犯行以外はやることがなく暇だった」。ストレス発散も兼ね、余った交通費は遊興費に使った。土日は恋人に会うため自宅アパートに帰った。「営業の仕事をしている」とごまかしていた。

 東京、千葉、福岡、熊本、愛知、岐阜、石川、そして福井。初めての犯行から逮捕までの1カ月近く、新幹線や特急、飛行機で全国行脚した。盗んだキャッシュカードは約30枚。利用停止になるなどATMで使えなかったキャッシュカードは各地の川や道路の側溝に捨てた。それでもATMで引き出せた額は50回で約2千万円に上った。報酬は引き出した額の8%。1カ月で約160万円を手にする計算だ。

 ■ ■ ■

 昨秋、キャッシュカードをだまし取ろうとする不審電話が石川県内で多数確認された。このとき、男は石川県内の80代男性宅を訪問し、キャッシュカードを盗んでいた。翌日、岐阜市内のATMで約70万円を引き出した後、電車でJR福井駅へ来た。

 指示役からは「次は○○駅に向かってください」と、連絡が次々に来る。最初に降りたJR春江駅前は、時間をつぶせる喫茶店やファミレスがなかった。「田舎だな」。1キロ以上歩いてファミレスに入り、スマホで動画やネットを見て暇をつぶした。

 春江駅からJR福井駅に戻り、福井鉄道福武線の福井駅、仁愛女子高校駅、田原町駅、西鯖江駅、越前武生駅、JR武生駅と、計8駅を丸1日掛けて乗り降りした。

 この間、男が巡った先の住宅では詐欺の不審電話が相次いでいた。「福井県が狙われている。受け子を捕まえ、被害を防がねば」。福井県警は電話の多発状況をメール配信「リュウピーネット」で注意喚起した。

 そして、捜査が動きだした。

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「高額バイト」突然囲まれ男逮捕20代受け子の後悔、消えない罪悪感20

18年秋のある日。午後7時半ごろだった。福井県坂井市のJR春江駅から県内を1日中移動していた受け子の20代の男は、関東へ帰るため越前市のJR武生駅で切符を買った。突然、職務質問された。いつの間にか刑事に取り囲まれていた。20人、いや30人ほどいただろうか。

「福井では犯行していないし、捕まらないと気を抜いていた」

 “高額バイト”を始めて1カ月足らず。「終わったな…」。報酬を一度も手にすることなく手錠がかけられた。

 ■ ■ ■

 この日午後2時半ごろ、JR春江駅周辺で不審な電話が多発したことを受け、福井県警が動きだしていた。「必ず捕まえる」。多数の捜査員を同駅周辺へ急行させた。捜査員は男を見つけ武生駅まで5時間にわたり尾行していた。

 巧妙に実態を隠し「裏」に潜む特殊詐欺グループで末端に当たる受け子は「表」に出る数少ない存在だ。「検挙を積み重ね『福井へ受け子を行かせたら捕まる』と思わせることが抑止につながる」とある捜査員。受け子の摘発が組織壊滅に結びつくケースは少ないが「組織の中枢に切り込む端緒であることは間違いない」と話す。

 ■ ■ ■

 男は、高齢者宅6軒でキャッシュカードなどを盗み、現金自動預払機(ATM)から計1237万円を引き出したとして起訴された。起訴分のほか、3軒でキャッシュカード約10枚を盗み、約800万円も引き出したという。「犯行には徐々に慣れたが、最後まで罪悪感は消えなかった」

 2019年5月の一審判決。福井地裁は「末端の立場とはいえ、犯行に不可欠な役割を果たした」と断罪、懲役3年6月を言い渡した。

 判決後、男は量刑を不服として控訴した。二審判決まで過ごした金沢市の金沢刑務所の拘置監で9月、中国を拠点とする特殊詐欺グループの十数人が摘発されたとのニュースをラジオで聞いた。「自分がいた組織の幹部かも…」。ある記憶がよみがえった。

 2018年、指示役から「中国に行って電話をかける『かけ子』をしないか」と誘われていた。「場所はホテルで日本人しかいない。バイト代は月300万円ほど」。パスポートは用意するという。破格の給料は魅力だったが、一度行ったら1カ月は帰国禁止。怖くて断っていた。

 ■ ■ ■

 10月、控訴は棄却された。被害者への弁償は6人に1万円ずつしかできていない。後悔は消えない。ツイッターで安易にバイトを検索したこと、犯罪と気付いても続けたこと…。「勇気を出してやめるべきだった」。ツイッターから犯罪にはまっていく危険性も身をもって知った。

 特殊詐欺が社会問題化していることは知っている。だが、これからもだます人、だまされる人がいなくなることはないと思う。

 男は、取材場所となった金沢刑務所の面会室でこうも語った。「特殊詐欺の手口はさらに複雑、巧妙化するはず」

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誰にも言えない詐欺被害、苦しむ女性受け子逮捕知り被害自覚「恥ずかしい」

 「自分がしっかりしていれば。被害に遭ったなんて恥ずかしくて誰にも言えない」

 2019年3月、特殊詐欺グループの「受け子」の男にキャッシュカードをすり替えられ、現金50万円を引き出された福井県の70代女性は、だまされてしまった自分を責めた。

 収入は年金のみで医療・介護費もかさむ。50万円は、嫁いだときに母親からもらった大切なお金と年金を少しずつためたものだった。

「捕まえた犯人が持っていた名簿にあなたの名前が載っている。同じ地域で何人も被害に遭っている」。警察官を装った男は、電話でこう切り出した。

 「金融機関の者が封筒を持って家に行くので、待っていてほしい。封筒にキャッシュカードを入れて大切に保管してください」と男。通報されるのを防ぐためだったのか「電話は切らないで」と何度も念を押された。

 内容はよく理解できなかったが、言われるまま、電話を切らずに玄関で「金融機関」の訪問を待った。その間、カードの暗証番号を「孫の誕生日」と教え自宅の特徴や表札も伝えた。「いつ来るんですかね」「もう近くにいます」

 白シャツの「受け子」の20代の男が玄関に現れた。男は一言もしゃべらなかった。指示はつないだままの電話越し。「封筒にカードを入れ、割り印をしてほしい」。女性は指示通り、印鑑を取りに室内へ向かった。その隙に偽のカードが入った封筒とすり替えられていた。気付かないまま割り印を押し、そして、指示通り小物入れの引き出しに大切に保管した。

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 被害に気付いたのは約1週間後。警察から「キャッシュカードが使われている」と連絡があった。その後、玄関に現れた受け子の男が県内で逮捕されたことを知った。

 女性は40代の息子と2人暮らし。普段から息子に「不審な電話には出るな」と注意されていたが、カードを盗まれたという認識は全くなかった。

 50万円は女性にとって大金。「体も弱ってきた。手すりを付けるトイレの改修などに充てたかったのに…」。特殊詐欺の魔の手にかかったことに肩を落とす。

 11月29日、新聞で「電話をかける『かけ子』など犯行グループの拠点がフィリピンにあった」と報道された。息子は記事を読み「私たちの50万円もフィリピンまで持っていかれたかも。首謀者らが捕まらないと被害は続く。何とか捕まえてグループを壊滅させてほしい」と思いを強くした。

 「受け子は雇われの身だろうが、特殊詐欺グループは本当にずる賢い。もっと真面目なことに頭を使うべきだ」。同時に「母からカードを全て預かっていれば良かった。被害に遭ったのは、自分らの落ち度、ふがいなさのせい。自己防衛できなかった方も悪い」とも語る。被害が分かって以降、母親と同じく、自責の念に駆られている。

 被害は親戚にも近所にも明かせぬまま。二人だけの、秘密になっている。

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