今年6月に行われた韓国女子ゴルフメジャーの「韓国女子オープン」で、誤球に気づきながらもそのままプレーを続け、約1カ月後に公にした19歳のユン・イナ。

 

 衝撃の不正行為は韓国女子ゴルフ界を揺るがす事件となったが、大韓ゴルフ協会(KGA)と韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)は、同協会が主管・主催するすべての大会に3年間の出場停止処分を下した。

 

 今季は初優勝を含むトップ10入りが5回と波に乗る19歳のルーキーの登場にゴルフファンも大いに沸き、170センチの高身長を生かしたドライバーショットはツアー1位(約263ヤード)。

 

 スター性のある韓国の新星がツアーから去ることを惜しむファンが多いのも事実だ。KLPGAツアー史上最も重い懲戒処分に“早期赦免”を求める声もあるというが、ユン・イナは自身の過ちを認め、これを受け入れる姿勢を見せている。

 

 これで2025年9月まで韓国での大会には出られないことになる。3年も実戦経験ができなければ、選手生命を失ったのも同然。それに3年後に復帰したとしても、現在の実力を維持するのは難しいだろう。

宋ボベにも韓国2年出場停止の過去

 彼女が今後、どのような道に進むのかの正式な発表はまだないが、プロゴルファーとしての道が完全に断たれたわけではなさそうだ。韓国メディア「news1」は「米女子ツアーや日本女子ツアーに挑戦するなら、KLPGAやKGAがこれを止める名分はない。予選会などを経て試合に出ることに問題はないだろう」と伝えている。

 

 実は過去、韓国女子選手が出場停止処分を受けたあと、日本ツアーに参戦した事例があるからだ。それは日本女子オープンなどツアー3勝している宋ボベだ。

 

 彼女はアマチュアの17歳で韓国女子オープンを制し、2004、05年にはKLPGA大賞(年間最優秀選手)を受賞した有名選手。

 

 事件は2008年の韓国女子ツアー開幕戦「スポーツソウル・キムヨンジュ女子オープン」に特別招待選手として出場した時に起こった。宋は大会2日目にボールの処置方法を巡って競技委員と言い合いとなり、最終的には9ホールを終えた時点で途中棄権。この行為を重くみたKLPGAは、2年間のツアー出場停止処分を科した。

 

 宋は後日、自身の行為について謝罪し深く反省。実際の裁定でも韓国内で疑問が起きていたことで競技委員長がクビになるなど、結果的には1年6カ月で赦免となった。ただ、宋は2007年から日本ツアーに参戦している状況で、実際にメジャーを含む3勝を手にした。

 

 韓国ツアーの出場停止は特に問題はなかったが、それでも選手の立場としては、韓国ゴルフ史に汚点を残す形となった。

海外ツアーに出るか否か

 いずれにしてもユン・イナの3年出場停止は、宋ボベ以上の重い懲戒。心身ともに疲弊している状況だが、本人がプロゴルファーとして再起を賭けるなら、海外ツアーの選択もあるということ。米ツアーではQスクール、日本ツアーに参戦したいならプロテストを経て正会員となり、QTに参戦する道を模索することも可能。

 

 ただ、周囲では「早急な判断を下せば、世論から否定的な視線が向けられる」との声もある。今はほとぼりが冷めるまでジッとしているのが賢明な判断なのかもしれない。