信じるか信じないかはあなた次第
阪神高速の料金所でETC(自動料金収受システム)レーンを不正にすり抜けた設備業の男(34)(神戸市兵庫区)が、道路整備特別措置法違反容疑で2月に兵庫県警に逮捕された事件。
捜査では、男が前を走る車にぴったりと追走して開閉バーが降りる前に通過する「カルガモ走法」と呼ばれる手口を600回以上、繰り返していたことが判明した。
摘発を支えたのは、「不正は許さない」という阪神高速道路の社員の執念だった。(鈴木彪将)
- 【ETCキセル】ETC不正通行で高速道路でやりたい放題した男の末路。カルガモ走行をはじめ、違法な裏技を使いまくる(マンガで分かる)
- ETC「カルガモ走法」で不正通過600回超、男を追い詰めた阪神高速社員の執念
- 悪質行為「ETCキセル」多発? 軽登録を普通車で使用はなにが問題なのか
- ETCキセルは刑事罰に?実際に逮捕例も
- 他にも多発するETCでの不正は、重い罰則が待つ
【ETCキセル】ETC不正通行で高速道路でやりたい放題した男の末路。カルガモ走行をはじめ、違法な裏技を使いまくる(マンガで分かる)
ポイント① カルガモ走行はバレない
ポイント② ETCキセル常習犯は、罪の意識を感じていない?
ポイント③ 通行期間を偽ってもバレっこない?
ポイント④ ETCの再セットアップもバレっこない?
ポイント⑤ 支払うお金は通常の2倍以上+違約金?
ETC「カルガモ走法」で不正通過600回超、男を追い詰めた阪神高速社員の執念
阪神高速の料金所でETC(自動料金収受システム)レーンを不正にすり抜けた設備業の男(34)(神戸市兵庫区)が、道路整備特別措置法違反容疑で2月に兵庫県警に逮捕された事件。
捜査では、男が前を走る車にぴったりと追走して開閉バーが降りる前に通過する「カルガモ走法」と呼ばれる手口を600回以上、繰り返していたことが判明した。
摘発を支えたのは、「不正は許さない」という阪神高速道路の社員の執念だった。(鈴木彪将)
「また出た。常習犯だな」――。2018年7月、阪神高速神戸線・柳原料金所(同区)で撮影された画像を見て、同社の社員たちは確信を深めた。
前の車にくっついて、バーが降りる前に一緒にETCを通過する軽乗用車の運転手は、ほおやあごを覆うひげを生やした男。
特徴的な 風貌ふうぼう で、別の画像でも、不正通行する軽トラックを運転する姿が映っていた。
阪神高速のETCは、十分な車間距離がない状態で2台の車が通過しようとした場合、バーにぶつかる事故を避けるため、開いたままになる。男は、この仕組みを逆手に取ったとみられ、前の車と一緒に通過して料金の支払いを免れる不正を重ねていた。
阪神高速では、入り口に料金所があるが、出口には設けられていない箇所が多い。そのため、「入り口さえすり抜ければ、料金を払わずに通行できる」と考えた悪質ドライバーらが不正通行を繰り返すケースが頻発していた。
同社は07年、不正を阻止するため、料金所のレーンを通過する車を複数のカメラで撮影する「不正通行監視システム」を導入。
男の車も、車体の特徴やナンバープレートが映っていた。同社はナンバーをもとに、弁護士を通じて車検業務を担う軽自動車検査協会に男の住所を照会。18年11月、男宛てに料金の未払いを通知する文書を送った。
しかし、男は通知を無視して不正通行を繰り返した。
同社も、負けじと文書を送り続けた。しかし、20年7月に郵送した9通目の文書は、理由は不明だが、戻ってきたという。
「逃げたんじゃないか」。
同社の社員は同年8月、男の自宅を訪問して直接、料金を請求しようとしたが、住んでいるかどうかすら確認できなかったという。
男は同年9月までに、600回以上の不正通行を繰り返し、被害金額は約70万円に膨れあがった。業を煮やした同社は今年1月、県警に被害を相談。
逮捕された男は、仕事のたびに不正通行をしていたといい、県警の調べに、「料金を払いたくなかった」と身勝手な動機を供述したという。
男は起訴され、今月16日に地裁で判決が言い渡される。監視システムの導入で、不正通行は大幅に減少しているが、撲滅には至っていないという。
阪神高速道路は「単純な手口だが、打てる対策も限られているのが悩ましい。悪質な不正通行は、車両や運転手を特定し、厳正に対処していきたい」としている。
悪質行為「ETCキセル」多発? 軽登録を普通車で使用はなにが問題なのか
軽自動車と普通車では高速道路の利用料金は異なります。では、軽自動車で登録したETC車載器を普通車で使用するとどうなるのでしょうか。
ETCキセルは刑事罰に?実際に逮捕例も
近年、高速道路料金の支払いにおいて「ETC」を利用する人が93.1%(2021年3月)を占めるようになりました。
軽自動車と普通車での高速道路の通行料金は異なりますが、軽自動車で登録したETC車載器を普通車で使用するとどうなるのでしょうか。
ETCの利用者が増加している一方で、「軽自動車として登録されたETC車載器を普通車で利用する」という悪質なドライバーもいるようで、その行為は「ETCキセル」などと呼ばれています。
車種などのクルマの個別情報は、ETCカードを差し込む「車載器」に登録されています。
そのため、車載器に登録されている個別情報に変更があった場合は、セットアップし直さなければなりません。
なお、ETCカードは特定のクルマと紐づいているわけではなく、どの車載器で使っても問題がありません。
NEXCO中日本によると、クルマのナンバープレートを変更したり、車載器をほかの車両に付け替えたりするなど、車載器の登録情報に変更が生じた場合は販売店などで再セットアップの手続きが必要としています。
そして、登録情報に変更があったにも関わらず車載器の再セットアップをおこなわなかった場合は、道路整備特別措置法の第24条第3項に違反したとして、逮捕される可能性があります。
2020年7月22日、東名高速道路などのETCレーンにおいて、不正通行をおこなっていたドライバーが、道路整備特別措置法違反の容疑で送致されました。
容疑者は、通行料金の安い軽自動車などで登録されたETC車載器を普通車に取り付けて走行し、本来支払うべき支払いを不法に免れていたため、NEXCO中日本側が静岡県警察に通報したことがきっかけとなり、送致に至ったとのことです。
ETCキセルについて、NEXCO中日本の担当者は以下のように述べています。
「当社はこれまでも、有料道路事業に対するお客さまの信頼を損ねることがないよう、『不正通行は許さない』という強い姿勢で取り組んでまいりましたが、今般、容疑者が送致されたことは、通行料金負担の公平性の確保および不正通行抑止につながるものと考えています。
なお、本件容疑者による不正通行については、通行料金の確認をおこない、不法に免れた通行料金に加えて割増金(免れた通行料金の2倍に相当する額)を請求します。 今後も不正通行に対し、毅然とした態度で臨むとともに、警察の捜査に積極的に協力し、不正通行対策に取り組んでまいります」
※ ※ ※ NEXCO各社は不正通行の注意喚起に力を入れており、地元警察との連携や防犯カメラの設置などを徹底しています。
他にも多発するETCでの不正は、重い罰則が待つ
ETCキセル以外にも高速道路料金に関連した不正行為は後を絶ちません。
2021年4月には、大阪府にてバイクで通行料金を支払わずにETCレーンを突破したとして、会社員の男性が道路整備特別措置法と道路運送車両法違反の疑いで逮捕されました。
男性は、3年ほどの期間で200回以上繰り返したと話しており、該当区間の通行料金はおよそ1000円なので、金額にすれば20万円にものぼります。
また、2021年2月にも、阪神高速道路において、ETCレーンを不正に通行した男性ドライバーが、道路整備特別措置法違反の容疑で兵庫県警に逮捕されました。
兵庫県警などによると、男は前方車両にピッタリと追走してバーが降りる前に通過する「カルガモ走法」と呼ばれる不正を計600回以上繰り返していたことが判明。懲役3年、罰金30万円がいい渡されました。
※ ※ ※ これらの逮捕には、各高速道路会社の「不正を許さない」という取り組みや、一般ドライバーからの通報がきっかけになっているとのことです。
なお、もしETCカードの挿し忘れやレーンの誤進入などにより、ただしく通行料金の支払いができなかった場合でも、近くのサービスエリア・パーキングエリアなど安全な場所から、管轄の高速道路会社に連絡をすることで後からの支払いが可能です。