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ロシアのウクライナ侵攻から2週間近くが経過したが、この戦争に関する虚偽または誤解を招く情報の流れは止まっていない。現在もインターネット上で、突拍子もない珍説がいくつか広まっている。
- (漫画)クライシスアクターの正体を漫画にしてみた(マンガで分かる)
- 【解説】 ウクライナ侵攻は「でっちあげ」というネットの偽情報
- 「クライシス・アクター」にまつわる偽の主張
- 動く死体
- 木製の銃に関する偽の主張
- スティーヴン・セガール氏はウクライナで戦っていない
- ロシアの外交官が偽情報を拡散
- 偽の映像
- 副大統領の妻は軍に所属していない
(漫画)クライシスアクターの正体を漫画にしてみた(マンガで分かる)
【解説】 ウクライナ侵攻は「でっちあげ」というネットの偽情報
この映像は、2020年にウクライナで放映されたドラマのもので、ロシアの侵攻とは無関係だ
ロシアのウクライナ侵攻から2週間近くが経過したが、この戦争に関する虚偽または誤解を招く情報の流れは止まっていない。現在もインターネット上で、突拍子もない珍説がいくつか広まっている。
「戦争はでっちあげだ、メディアの捏造(ねつぞう)だ」、あるいは「西側諸国が、その規模を誇張している」という偽の主張も、拡散・共有され始めている。
BBCモニタリングとリアリティーチェック(ファクトチェック)チームが、そのいくつかを検証した。
「クライシス・アクター」にまつわる偽の主張
若い女性と若い男性が血糊を顔に塗る動画が、複数のプラットフォームで数百万回の再生回数を記録している。
この動画は、ウクライナの戦争がでっちあげで、民間人の犠牲者が実は「クライシス・アクター(非常時演出のため雇われた人)」だという証拠だとして、拡散されている。
しかし、この映像は戦争とは無関係だ。2020年にウクライナのTVドラマ「コンタミン」の制作セットで撮影されたものだ。
2020年12月にツイートされた撮影現場の画像で、この俳優の姿が確認できる。
Twitter の投稿の終わり, 1
動く死体
複数の遺体袋を前にした報道記者の動画が、複数の主要なソーシャルネットワークで話題となり、親ロシア派のアカウントによって広く拡散されている。
映像では数秒後に、遺体袋の一つが動き出し、男性がカバーを外し、カメラマンに付き添われている。
ソーシャルメディアの投稿では、この映像はウクライナで撮影されたもので、戦争がでっちあげであるか、「西側のプロパガンダ」によって作られたものであることを証明するものだと主張されている。
しかし、この主張は間違っている。オーストリア紙「エスターライヒ」が報じたように、この動画は今年2月初旬にウィーンで行われた気候変動に対する抗議デモのものだ。活動家「フライデー・フォー・フューチャー」が企画したもので、遺体袋の描写は、炭素排出が人命に及ぼす危険性を強調するために使われていた。
同じ動画は2月にも、新型コロナウイルスの「クライシス・アクター」だという偽の主張とともに、陰謀論グループによって拡散されていた。
木製の銃に関する偽の主張
米FOXニュースの放送で、ウクライナの男性2人が木製の銃のようなものを手にしているスクリーンショットが話題になっている。
このスクリーンショットには、ウクライナの戦争はでっちあげで、本物の銃でないことがその証拠だという誤った主張が添えられていることが多い。
実はこのスクリーンショットの元となった映像は、開戦前の2月中旬に撮影されたものだ。
極右団体「アゾフ・バタリオン」が、ロシアの侵攻に備えて自分たちや地域社会を守ろうとするハルキウ(ロシア語ではハリコフ)の民間人志願兵を対象に行った訓練コースの中で撮影されたものだという。
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スティーヴン・セガール氏はウクライナで戦っていない
米CNNの認証済みツイッターアカウントが発信したように見せかけたこの偽ツイートは、アメリカとロシアの二重国籍を持つ俳優スティーヴン・セガール氏(69)が、ウクライナの首都キーウ(ロシア語でキエフ)近郊で「ロシアの特殊部隊の中に」目撃されたと主張するものだ。
このツイートは一般ユーザーだけでなく、多くのフォロワーを持つ影響力のあるアカウントにも取り上げられた。アメリカの人気コメディアンでポッドキャスト司会者ジョー・ローガン氏は、インスタグラムで1400万人のフォロワーにこのツイートを共有した。
しかし、セガール氏はウクライナでロシア軍と共に戦っているわけではない。このツイートはおそらく、認証済みアカウントのツイートにみせかけた偽ツイートを捏造(ねつぞう)できる、無料オンラインツールを使って作成されたものだろう。
セガール氏は先週、FOXニュースに対し、両国を「ひとつの家族」として見ており、「前向きで平和的な解決」を望んでいると語った。
ローガン氏はその後、インスタグラムの投稿を削除した。
ロシアの外交官が偽情報を拡散
ロシアの外交官が、ウクライナにロシアが侵攻した際にジャーナリストが殺害されたという捏造記事を示すスクリーンショットを公開した。
ドミトリー・ポリャンスキー国連次席大使は先に、「フェイクの作り方(中略)、同僚たちは注意してほしい、主戦場はウクライナではなく、MSM(主流メディア)のうそと捏造にある」とツイート。
この投稿には、米CNNが「バーニー・ゴアーズ」という男性が2回死んだと報道したという偽情報が添えられていた。
それによるとCNNは、昨年のタリバンによるアフガニスタン掌握時に「死んだ」男性が、ウクライナでも「死んだ」と伝えたことになっている。
しかし、証拠として提示されたスクリーンショットは、CNNの偽アカウントによるもので、アカウントはいずれもその後ツイッターによって凍結されている。また、画像で「バーニー・ゴアーズ」として紹介されている男性は、実在するジョーディー・ジョーダン氏というユーチューバーで、今も存命だ。
CNNの担当者は、ロイターのファクトチェック(事実確認)担当者に対し、この投稿は「まったくのフィクション」だと語った。
偽の映像
大勢の人たちが、恐怖のあまり逃げたり叫んだりするよう監督に指示されるという動画が、いくつかのバージョンと共に、複数のプラットフォームで数十万回の再生回数を記録している。
この映像はウクライナから流出したものとされており、メディアが流した悲惨なシーンの一部は捏造されたものだと示唆している。
しかしこの映像は、2013年に英バーミンガムのヴィクトリア広場で撮影されたSF映画「2020 世界終焉の日」のものだ。当時
この映画のサイモン・コックス監督はツイッターで、「自分の映像がこのように使われているのを見てショックを受けている」と書いた。
副大統領の妻は軍に所属していない
ソーシャルメディアでは、ロシアの侵略と戦うためにウクライナ軍に参加した「ウクライナ副大統領」の妻だという画像が拡散されている。
しかし、ウクライナには副大統領はいない。
一方ツイッターでは、この写真の女性がウクライナの大統領夫人オレナ・ゼレンスカ氏だという誤った主張も見受けられる。
事実確認団体「Logically」によると、この写真は2021年8月に撮影されたウクライナ兵のもの。キーウで行われた軍事パレードのリハーサル中に撮影された写真だという。