ジュースなどの飲料水やたばこに始まり、新聞・書籍やお菓子類などの実商品の販売、食堂やファミレスや牛丼チェーン店での食券、さらには両替機やコインロッカーのようなサービスの提供にいたるまで、世の中には多様な自動販売機が展開され、機能を発揮している。そして先の震災に伴う電力需給問題に絡んでバッシングを受け、省エネ化の動きが加速されたり、タスポの導入やたばこ需要の減退でたばこ自動販売機の数が激減したりするなど、社会情勢の変化を受けながらも、自動販売機は毎日活動を続け、人々の生活を支え続けている。今回はその自動販売機の動向を、業界団体の日本自動販売機工業会が毎年公開している統計値を基に確認する。

 

まずは直近、2021年末時点の自動販売機台数。飲料水、各種サービス、たばこその他もろもろを合わせ、全部で400万3600台。

 

↑ 自動販売機普及状況(各年末時点、万台)
↑ 自動販売機普及状況(各年末時点、万台)

 

種類別では飲料自動販売機がもっとも多く6割近くの225.4万台、次いでコインロッカーや両替機、ビデオソフトやパチンコ玉貸し機などの自動サービス機が129.5万台。切手や乾電池、新聞などの日用品雑貨自動販売機の20.3万台が続く。グラフ上では細分化掲載していないが、飲料自動販売機内では清涼飲料がもっとも多く199.9万台、残りが牛乳やコーヒー・ココア(カップ式)、お酒やビールなどとなる。

 

直近年における前回年からの変移を見ると、たばこ自動販売機の減少が著しい。この動きは2011年分から継続している傾向だが、2011年は震災による物理的ダメージに加え、たばこそのものの出荷制限や品目数の減少なども影響を与え、採算性の問題や省エネの観点から撤去する事例も多く、大きく減少していた。しかし2012年以降は少なくとも震災や出荷制限による直接原因は無いにもかかわらず、相変わらず大きな減少を続けている。

 

これはたばこそのものの需要が減少しているのに加え、節電対策の矢面に立つ形で自動販売機そのものが一時停止させられたり照明を消されたりすることでアピール度が減り売上が落ち、採算が取れなくなる事例が増えていること、さらにはタスポ絡みや震災後の出荷制限などを経て、たばこを自販機で買う人そのものが少なくなっているのが要因(コンビニでの購入にシフトしつつある)。

 

その上、たばこの自動販売機を併設している「街のタバコ屋さん」的なたばこ販売店が、店主の高齢化によって閉店、それに合わせて自動販売機を撤去してしまう例も増えている。現在稼働中の自動販売機でもビジネス面で厳しい状態が続き、来年以降もさらに台数が減少するであろうことは容易に想像ができる。

 

↑ 自動販売機普及台数前年比(2021年)
↑ 自動販売機普及台数前年比(2021年)

 

報告書からいくつかの動向に関して解説を拾うと次の通り。飲料自動販売機では「夏場の長雨やコロナ禍で悪化した需要の回復が遅れたため、飲料メーカーや管理運営業者が投資を控えたことによる新規出荷の鈍化」「人手不足の影響で不採算拠点の撤去が滞っている」が減少はしたもの減少幅が最小限にとどまった原因としている。

 

券類自動販売機は構成要素の乗車券券売機において「ICカード利用者の増加によるチャージ機能および長距離切符・定期券販売機能を搭載するなど、高機能化に伴い台数が集約されたことや利用客減少による収益悪化を受けて、鉄道事業者が新規購入を買いひかえた」(マイナス0.7%)とある一方で、もう一つの構成要素である食券販売機・入場券などでは「電子部品などの不足による影響で在庫不足となり、需要のひっ迫があるものの飲食店における非対面決済ニーズの高まりが出荷台数を押し上げる要因となり」3.0%の増となり、結果として券類自動販売機全体でもプラス(プラス2.1%)となったとしている。

 

震災直後ほどではないものの、今なお自動販売機に対する無理解に端を発する、電力に絡んだバッシングの声を見聞きする。引き続き自販機業界には「合理的」な対策を求めるとともに、一般の人たちにおいては感情論的・非論理的非難を起こさないよう願いたいものだ。